起きると、風景が一変していました。
朝が輝いていました。
おそるおそる地面の柔らかさに戸惑いながら階段を下ります。
大阪ではここ10年記憶にない大雪です。
深々として、雪の重さに植物が頭をもたげている中、
姿勢良く立っている赤いポストが目につきました。
坂をどんどん下っていくと、
ニット帽をかぶった見慣れた顔に出会いました。
カフェ高木のSさんです。
駐車場で車のエンジンをあたためている様子でした。
この天気に感嘆しあってから、
「これからお店あけはるんですか?」
と聞くと満面の笑顔でうなずき、
器の写真を撮りに海の方に行くと言うと、
「傘かそか~?」
と眼尻を下げて心配顔に変わります。
濡れても構わないコートを着ていたので、
遭難しない程度に帰ってきます。
とご遠慮して、会釈のあとまた坂を下ります。
ベッドから靴下をはかずにブーツをはいています。
海に下る道の先は色彩が無くなっていました。
このころブーツに水がしみ込んできました。
降ってくるとき見かけた、
立往生していた車は居なくなっていました。
コートがだんだんと重くなってきます。
足跡が消えていきます。