思ったより乗継がうまくいき、待ち合わせ時間に三十分早く
JR和歌山駅につきました。
富田林から来る漆をやっているAさんを
改札口の横にあるブランコのような形のベンチで待ちます。
Aさんの友人がひょんなことから、陶芸をやっていたお医者さんの家を管理することになり、
とても面白い場所だから見に行こうと誘われていたのです。
もう半分崩壊しているそうですが登り窯もあり、
海の見える展示室もあるそうです。
15分ほどしてAさんが現れました。
鮮やかな緑色の電車に乗り込み、二人で紀州梅鳥の駅弁を食べながら、
漆のこと陶芸のことが向かい合わせの席の間をいったりきたりしているうちに、
Aさんが生物の先生だったことが分かりました。
昔読んだ生命の起源の本にあったある海岸のコアセルベートのことや
相転移のことに夢中になり、
周りの景色にも注意を払わなくなったころに車内アナウンスが流れました。
「架線に何かひっかかっており、前の電車の車掌が取り除いています。しばらくお待ちください。」
「架線にひかかっているものが困難だと連絡が入りました。」
陶芸の家を管理しているBさんに遅れる旨を連絡すると、
列車が停止した「紀伊由良駅」まで迎えにきてくれることになりました。
二人で車掌さんに扉を開けてくださいと言いに行くと、ご婦人が
二時のお芝居に間に合わない。復旧するのか、タクシーの方が、もう二時に、
と車掌さんに矢継ぎ早に問うていました。