2013/01/22

民宿と道明寺 器展

 
 
「陶芸の家」は印南町の山手、斜面の中腹にありました。
 
陶芸にのめりこんでいたお医者さんが亡くなったのはずいぶん前のことだそうですが、
古めかしい空気はまったくなく、広い出窓からは光が差し込み、
斜面のいるところにBさんの奥さんにほこりがはらわれた
窯道具や薪窯のあとが残っていました。
 
ご夫妻もこの場所をもったいないと感じて、
何か文化的なことができる場所かカフェにできないかと考えているところだそうです。
 
展示室の外には印南の町や漁港、海、そして「かえる橋」を見渡せる場所があり、
椅子がいくつか置かれていました。
 
日も低くなり、黄色く、だんだんと赤のハイライトを帯びた町から海を見渡すと
陽の光を細かに反射する海の上に美しい形の上に緑の木々がかぶさった岩山が見えます。
 
あれは「まるやま」と呼ばれている。
 
とBさんが教えてくれました。
 
 
 
 
今日はどこかで一泊して、このあたりの史跡や海沿いを散策して帰ろうと思うというと、
Bさんが地元の民宿や旅館に電話をかけて下さいました。
 
Aさんと御坊の駅で別れ、
一番海に近いという印南の民宿まで車で送っていただく間、
あの「陶芸の家」でできること、印南のことで話は尽きませんでした。
 
 「民宿 赤坂」は「まるやま」のすぐそばでした。
 
 
 
 
 
皿 plate     W137 H23mm(sold out)                          Map 
 
 
おかみさんが明るく出迎えてくれて、部屋まで案内しながら、
夕食の時間やお風呂の時間を聞いてくれます。
 夕飯は自家製キムチのチゲ鍋と新鮮なお刺身、
ずけのお寿司にお煮物とこれもあれもと出てくる。
 
感じのよい相槌と名調子を持つおかみさんに猫のハナちゃんもおずおずと出てきて、
どこでも同じ味のはずの瓶ビールがとてもおいしくなって進みます。
 
 
明日行く場所を相談すると、
安珍清姫の道成寺なら近くに用事があるから送ってあげられるよと聞いて、
明日はまずは道成寺と決め、床につきました。
 
 
 
 
 
翌朝、7時に起きて海岸に散歩にでると、
まるやまの近くで流木が集められ火が焚かれていました。
 
ひとしきり海岸沿いや岩の上を歩いて民宿の方にもどると、
もう一か所焚き火が増えていて、
「寒いからあたらんねー」とおじいさんが声をかけてくれました。
 
印南のことを聞くと、ここは「なんにもなく」て「いなか」という方向に話が向かいます。
 
ここの小学校は全校で30人ほどで、仕事がないからみんな出ていくと、
 
「残る子は漁師さんになるの?」
 
と両手に熱を感じながら聞くと、
 
今は魚が取れんから、漁師になるのはおらん、
 
と好々爺の笑みで答えてくれます。
 
 
 
 
 
道明寺では境内のそこここに安珍清姫伝説にかかわるものがあり、
 
一つずつ読んだあと、有名な伝説の絵説法も見ずに
次の目的地に向かおうと階段を降りると、
青い法被を着た男性が土産物屋のおばさんに
 
ご苦労さまやねえ今日は何時から?
 
と呼び止められていました。
 
気になって
 
「なにかこれからあるんですか?」
 
と聞くと、
 
 
戻ると蛇の清姫が青い法被のたくさんの人に担がれていました。
どんどんという太鼓の音とともに煙を口から吹き始め
鐘が据えられた舞台のまわりを練り歩きます。
 
 
 
 
何周かしてから蛇は舞台の上に上り、くるくると鐘にしっかり巻きついた形になりました。
火を持って年配の青い法被の人が近づくと
蛇の口から花火の火がしゅーと噴きあがり、拍手喝采。
私も写真を持って舞台のまわりを右往左往します。
 
スマホの動画と写真の切り替えに手間取っていると、
歓声と笑いが起こりました。
 
舞台の鐘が開けられ、ちんまりと座った骨の模型が出てきました。
そばで青法被の人が上げるのは「迎春」の二文字。
 
 
 
碗 bowl     W100 H63mm 129g                      Map
  
 
この催しにすっかり嬉しくなって、ツアー客の後について
絵説法をする建物になだれ込みます。
 
するとまず始まったのは絵説法ではなく仏像の由来の説明でした。
 
さっきは気がつかなかったのですが、この絵説法の館の奥に
宝物である私の大好きな本当に古い時代の仏像をたくさんを納める場所があったのです。
 
国宝の千手観音像は本当に見事で、まぢかに見ることができました。