「休日書店 青々堂」は年に一度、
古書フリマ「じないまち古書散歩」の日にだけ開きます。
いつも休日だから休日書店。
この本屋で生まれ育ったSさん。
うちの器で料理を出してくれる「自然食レストラン暮らし屋
」さんの常連さんで、
そこで私が個展をさせてもらうようになった5-6年前からのお付き合い。
お知り合いになってまだ間もない頃
「ほら~!」
と買ったばかりの私作の小さな植木鉢に可憐な花を植えて、
暮らし屋まで持ってきてくれたことが印象的です。
「良いこと思いついたかも~!」
と庭で取ってきた葉っぱを器の下にレイアウトしてくれました。
今度は器の後ろに年季の入った本屋のの踏み台を置いて、
おばあさまがこの日のために買っておいてくれた
白いお花を活けてくれました。
棚には「青々堂」が毎日開いていたころの在庫品と
Sさんと旦那さんの読み終わった本が並んでいます。
赤い表紙の台本は旦那さんが小学生のころ
テレビ局に観覧に行った時にもらったものだそうです。
柔らかくしたコーヒーの袋にしっかりした裏地を縫ったミシン大好きならこさんのトートバック。
ならこさんの染めた布小物も青々としています。
雨の午前中は二人とも手持ち無沙汰。
交代で付近のお店に遊びに行き、
Sさんの旦那さんが「お客さんが来たよ」と走って呼びに来てくれること数度。
おかげで蔵ギャラリー横の園芸店 ぶぷれ さんで
珍しいクレマチスとコウモリランを、
雨が止んだ午後からは
お客さんがひっきりなしに訪れました。
ショーケースのレトロ飾りになっていた「プラチナ万年筆」に若い頃万年筆が好きだったという初老の男性が喰いつき、嬉しそうに当時のことを話したあと、一本お買い上げになりました。
ケースの上には昔の青々堂の写真が飾られています。
以前は表に壁が無く、軒先までところせましと
本や雑誌が並んでいました。
おばあさまが使っているお茶碗を見せてくれました。
そのお茶碗を見てSさんとお知り合いになったころ、
「母にプレゼントを」と
暮らし屋さんでお茶碗をお包みしたのを思い出しました。
もう5~6年前の作です。
「食欲がないときは藍子さんの器で食べるのよ。そうすると少し食べられるの。」
今もこの青々堂と繋がった母屋で暮らしているおばあさま。
言葉の純真さは少女のそれです。
片づけをしているとき、
おばあさまは朝に娘さんが飾ったちいさな花を
ショーケースに片肘をついて眺めていました。
「自然って何て美しいんでしょう。」
聞いていたのは私だけでした。
その素直さにオーバーに本当にそうですね!とも言えず、
何か気の利いた受け答えもできず、
ただ、んふふっと承認するように笑ったあと、
あの言葉にあいそ笑いでしか返せなかった
自分の日本人性に軽い自己嫌悪を覚えました。
また来年、「じないまち古書散歩」の日。